休日にライターのようにラグビーの取材をすることもある(けど最近お休み気味)

平日は私企業で営業マン、休日は時々ラグビーイベントとかの取材をしている30代男性のブログです。でも最近は本とか映画とかの話が多いです。

日本でやってるメジャーなラグビーのだいたい/ジャパンラグビー ファンブック/島田佳代子

本当に久々の更新です。ほったらかしになってしまって…。

さて、今年でライターっぽいことをやりだして2年になります。週末だったり、半休取ったりでちょこちょこ書き続け、いつの間にか20本ほど。今年もうまく続けていきたい。もちろんブログも、ということで今日はラグビー関連の本の紹介です。

  

ジャパンラグビー ファンブック エディーからジェイミーへ 日本代表の軌跡

ジャパンラグビー ファンブック エディーからジェイミーへ 日本代表の軌跡

 

 著者の島田さんは1999年から2007年までイギリスに住み、これまでにもサッカー専門誌での執筆実績に加え、ラグビーに関する本も書かれていた方。本書はサブタイトルに「エディーからジェイミーへ」とあるように、2015年ワールドカップまでと、それから・セブンズや国内の状況などを軸に、そこに携わった選手・裏方のスタッフの方、あるいはトップリーグチームのGMさんなど、様々な方へのインタビューを織り交ぜながらまとめられています。

 

本書の軸としてご紹介させていただいた日本代表の2015年~2016年、あるいはジャパンラグビーの現在と未来ということで紹介されているスーパーラグビーサンウルブズ)、トップリーグ、学生ラグビーの状況については、普段からラグビーが好きで追いかけてます!という人には「知ってるよー」と思うことも多いかもしれませんが、改めて整理された内容として読むことはマイナスにはなりません。もちろん、ここ数年で最近好きになりました!という方には端的にまとまっていますし、専門誌よりも読みやすいと思います。そして何よりも本書の価値を高めているのは総勢20名を超えるラグビー関係者へのインタビューでしょう。現役選手はもちろん、普段なかなか目にすることのない選手を支える役目の方まで、いろんな話を読むことができます。

 

と、いうことで広くいろんな方に手に取ってもらいやすい内容で、一通り日本のラグビーの現在地と、その背景はどんな感じで成り立っているのかを覗くところまで。ラグビー専門誌はちょっと違うんだよなぁ…という感じを持たれている方には特におすすめです。

 

 

余談ではありますが、誤字・脱字がちょっと目につくのは残念…。背景がわからないので憶測ベースではありますが、編集の方もそんなに詳しくないのかな…。そういう人材不足も日本のラグビー界の課題だと、個人的には思っています。

 

近さを楽しむならトップイースト、あるいはトップウェスト。

大変ごぶさたしています。本業のほうもバタバタしたり、なかなか考えがまとまらない中で、気がつけば月日だけがたってしまい、あっという間にトップリーグが開幕し、ちょっとだけ涼しい日もあって、いよいよラグビーシーズンが始まろうとしています。

 

ラグビー界隈ではトップリーグの集客数とか、月寒での開催の話とか、「19年に向けてどう盛り上げていくのか」という話が盛んに行われています。

まだまだ考えがまとまらない、というのが正直なところですが、例えばプロ野球のように毎日1万人を超える人たちが集まるようなスポーツには一朝一夕になれるものではありませんし、今の感じを見ているとトップリーグの集客とサンウルブス、日本代表、あるいはワールドカップにやってくるチーム同士の試合にいかに人を集めるのか、その先にどうつなげていくのかをそれぞれ分けて考えていく必要があるのかな、と思っています。それぞれに収益構造の違いもありますし、目的も違うと思うんですよね。トップリーグアカウントの体たらくを見てるとなんだかなぁ…となってしまうのですが。

 

 

そんな中、6月に1つクラブチームとしての要素を持ったチームにする、という発表を行った横川武蔵野アトラスターズ。企業チームでなくなることで逆に強化につながるのか、久々にラディキ=サモ、またフランソワ=エイスの2人の外国人選手も加わり、その戦いぶり、運営に注目しているチームです。近所(というか家から自転車で5分ばかし)の横河電機グラウンドで、トップイーストリーグの開幕戦を戦う、ということで、行ってまいりました。

 

試合のレポートはこちら↓

rugby-rp.com

 

対戦相手のラガッツも熱いチームで、秩父宮などで見るのとはまた違った面白さがありました。また、今季からワイルドナイツスポーツプロモーションとしてラガッツのコーチングに参加しているミヤッキーこと三宅敬さんもウォーターボーイを務めながら試合をサポート。試合を通して大きな声でチームを鼓舞し、戦略を確認し、と活躍されていました。最終的な点差は開いてしまいましたが、ラガッツも最後まで切れることなく戦っていたように思います。

 

さて、この日試合が行われた横河電機グラウンドを始め、企業の自グラウンドで行われることが多い下部リーグ。最大の魅力はその近さではないでしょうか。

 

それはプレーが近いことでもありますが、

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選手、チームが近い、ということでもあります。

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 ラインアウトのコーラーも務め、早くもFWをまとめてる感じのあったエイス選手。

 

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200ミリ程度のレンズでも、22mライン付近から逆サイドのゴールキックにここまで寄れる…。

 

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力強い突破から同点につながるトライを決めた安藤選手。

 

 

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かつてのチームメイトとの再会もあったというラディキ=サモ選手。

 

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するどいまなざしを送る三宅さん。

  

暗かったり、アナウンスがなくて何が起こってるかわからない、みたいなところは課題ですが、記事にも書いたように、選手たちが見送ってくれたり、試合後にクラブハウスを開放したりと、その近さはトップリーグ公式戦ではなかなか味わえないかも。

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公式発表で700人、ということですが(たぶんもう少し少ないとは思います)、無料で見れるのもスゴい。募金箱とか置いとけばカンパが集まるんじゃないかとか思うのですが、顔見知りの人たち同士が多そうなので、逆に難しかったりするのかな。いずれにせよ、開幕だから来たという人たちも多いでしょうし、このあと成績が伴ってくる中てどうなってくるか、もあるでしょう。顔見知りが中心という点で行くと、うまく知り合いの知り合い同士をつなげたり、まったく初めての人たちを巻き込んでいく必要もある。こうやって地域に密着したチーム運営をしていこうとすると、まちづくりとかコミュニティ作りの手法が参考になるのかもしれません。

 

飛び込み&ギリギリに行ったこともあって、(あと全く皆さんと面識がなかったりもして)まともに選手やスタッフの方に挨拶ができなかったのが心残りですが、これからもアトラスターズの活動には注目していきます!

 

 

ラグビーにまつわる様々な「なんで?」を考えるために/ラグビーをひもとく・李スンイル

ラグビーはどうして前に投げちゃいけないの?あのごちゃごちゃの中で何をやってるの?どうして反則があってもすぐに止めないの?……etcetc。

ラグビーを見たことがあれば誰しもが通りそうな疑問、あるいはおススメしようとすると必ず聞かれるアレコレを、その歴史・成り立ちやラグビー憲章をもとにたどっていく一冊。

 

 

ラグビーをひもとく 反則でも笛を吹かない理由 (集英社新書)

ラグビーをひもとく 反則でも笛を吹かない理由 (集英社新書)

 

 



著者の李さんは関東ラグビー協会でもレフリーを務めるフリーライター。過去に「青き闘球部」「もう一人の力道山」「ラグビーのみかた」などの著作もあり、ラグビーマガジンでもルールやレフリングに関する記事・コラムの実績をお持ちの方です。

そんな李さんが2015年ワールドカップ以後の盛り上がり、そして2019年の日本開催に向けてラグビーの魅力をより広く伝えるために、それぞれのプレーやシーンの背景に何があるのかを、歴史的な経緯などから文字通り「ひもといて」いきます。

 

本は「フットボール」の成り立ちから、ルール(規則)とロー(法)、レフリーとアンパイアという話からはじまり、オフサイドスクラム、ラック、モール、タックル、ラインアウトと、ラグビーの様々な要素に触れ、最後に「ラグビー憲章」についても解説します。種目としてのラグビーについてはもちろん、それぞれのプレーについて原理・原則、根幹にあるものは何か、というところから追っていく本書の内容は、他のラグビー関連本とは一味違った発見・面白さがあります。

 

最近ラグビーを見始めました、という人にはちょっと難しいかもしれないけれど、ラグビーをさらに深く見たい、友達を誘ったときにいろいろ聞かれたことに答えられるようになりたい、そんな人たちには特におすすめの1冊です。

 

 

本には関係ありませんが、セブンズすごいことになってきましたね!自分たちのペースをしっかり作って落ち着いた試合運びになってるように思います。今夜もがんばれー!

観る側の愛が溢れるエッセイ集/スポーツに恋して。篠原美也子

シンガーソングライターの篠原美也子さんという方が、写真家・ノンフィクションライターの宇都宮徹壱さんという方の有料メールマガジンに月一で連載していた「篠原美也子の月イチ雑食観戦日記」というコーナーを主体にした「スポーツ観戦エッセイ集」。

 

 

スポーツに恋して  感傷的ウォッチャーの雑食観戦記

スポーツに恋して 感傷的ウォッチャーの雑食観戦記

 

 

申し訳ないのだけれど宇都宮さんだけでなく、篠原さんについても存じ上げず、ただただ棚に並んでいるときのタイトルと表紙に描かれた2015年ラグビー日本代表のイラストに惹かれて手に取った一冊。
内容としては、サッカー、テニスをはじめ、ラグビーやゴルフ、ボクシング、野球、駅伝と幅広くスポーツを愛する篠原さんが、自身の観戦や息子さんのサッカークラブのことなどがつづられています。文章は比較的読みやすく、ライトなエッセイ、というとなんだかあっさりしている風に感じられるかもしれませんが、しかしこの人のスポーツに対する気持ちが読ませます。

 

白眉は息子さんのサッカークラブでの話をメインにつづられる2章「母は今日も観る」。「うたかたロックンローラー」と題された何編かは、スポーツをやる意味だったり、子供に秘められる無限の可能性だったり、いろんなものが詰まっています。本人もあとがきに書いている通りえてして「いい話」で終わってしまいがちな子供を題材にした話も、決して単純にそうではなくて、「意味がある・ない」「メリットがある・ない」で言い表しきれない人生の機微みたいなものが、そこにはあるんではないかと思わせる内容でした。

 

あえて苦言を呈すならばそれぞれのエピソードが書かれた年月が知りたかったということと、この表紙のカバーは反則だろうということ。

ラグビーの話はほとんど出てきません。秩父宮だったり、国立競技場の話はあるけれど、ワールドカップイングランド大会の話はありません。ゆえに、特にカバーに関してはどうかと思うのですが、それを差し引いてもいい本読んだな、とは思っているのです。

 

これが日本30年のスポーツノンフィクションや!的な。/肉体の鎮魂歌/増田俊也編

キュウソネコカミという若手バンドの歌に「お願いシェンロン」というものがあって、「これが中国4000年のリフ(ギターなんかで繰り返されるフレーズ)や!」という歌詞があるのですが、タイトルはそこから思いつきました。

大宅壮一ノンフィクション賞受賞、「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」の増田俊也氏セレクトによる、スポーツノンフィクション10選。ラグビーの話は出てきませんが、スポーツ絡みということで、ご紹介。

 

肉体の鎮魂歌(レクイエム) (新潮文庫) : 増田 俊也 : 本 : Amazon.co.jp

 

いま、あえて紙媒体で出すスポーツノンフィクションにふさわしい質感のある作品は何か。過去の作品を時系列に追っていくと、日本においてスポーツノンフィクションの歴史=Numberの歴史である、と選者の増田氏は言います。1980年の創刊、そこに描かれた「江夏の21球」。試合のシーンとともに甦るそのときの自分自身の姿…と言っても、時の流れとともに、読者にとっては「自分が生まれる前の話」が増えていくわけで、それでも伝わる文学作品たりうるスポーツノンフィクションとは?そういうことを考えながら選ばれた、10編の物語。

種目は野球、マラソン、総合格闘技、ボクシング、柔道、サッカー。各種目のことをそこまで深く知らなくても引き込まれてしまうのは、それぞれが持つ物語の強さゆえ。明るく元気に前向いて…という感じはないのだけれど、それでも続いていく毎日と闘っていく強さが感じられます。

 

悪い意味ではなく「ザ・ジャパニーズ・スポーツノンフィクション」、という感じがするというか、じゃあ海外のそれを読んだことがあるのか、というツッコミを受けると反論できないのですが、連綿と続く通奏低音のようなものが聞こえてくる短編集です。

それは常に勝者にあたるスポットライトではなく、その周辺にいる人たちにも届く柔らかな光。あるいはスポットライトの影。どんな人にも物語がある。そんなことを改めて感じさせてくれる一冊でもありました。

それはあまりに人間的な。/ダン・カーター自伝

3週間あまり更新ができておりませんでした。本業が忙しかった、は言い訳ですね。サンウルブスの1stシーズンが終わり、いろんな話も出てきて、トップリーグ開幕も近く…ということで、何を書こうか、何が書けるのか手が止まっていたのが本当のところかもしれません。

そんな中ではありますが、2週間ほど前に発売になったこの本を読み終えたので、ご紹介。タイトルもそのまま、「ダン・カーター自伝」です。

 

 

ダン・カーター 自伝 ―オールブラックス伝説の10番―

ダン・カーター 自伝 ―オールブラックス伝説の10番―

 

 

 http://www.amazon.co.jp/dp/4491032351

 

ダン・カーターこと、ダニエル・カーター自身の説明はラグビーを熱心に見ている人には不要と言えるかと思いますが、この10年ほど、オールブラックスの10番と言えば彼。史上初のワールドカップ連覇をはじめとする近年の圧倒的なまでの強さを作り上げたメンバーの一人。代表として最後の試合になった2015年のワールドカップ決勝、後半25分を過ぎて4点差に迫り、追い上げムード高まるワラビーズを一瞬で黙らせたドロップゴールは今も鮮明に思い出せます。

オールブラックスで獲得したキャップ数は115、年間最優秀選手に選ばれること3回、テストマッチ通算得点歴代1位。ワールドカップ後はフランス・ラシン92に移籍してチームをヨーロッパチャンピオンシップの決勝に導き、直近に来日した際も各地で歓迎を受けました。某福岡の高校にもやってきたものの、主力メンバーはセブンズの大会で東京遠征中。会えなかったメンバーは大いに嘆いたと聞いてますが(笑)、誰もが認めるスーパースターであり、世界最高の選手の一人でしょう。

 

そんなダン・カーターの自伝、ということで、どんな内容なんだろうと楽しみにしていましたが、そこに書かれていたのは想像以上に人間らしい、彼の来歴でした。

その前に出版されてリッチー・マコウの自伝では、若き日のリッチーが、ラグビー選手であった叔父から「GAB=Great All Black」と書けと言われてその道を意識し、歩き始めたというエピソードがあります(ニュージーランドで公開されるという映画の予告編にもそのシーンがありました)。カッコいいですよね。言葉はおかしいですが、絵になるエピソードというか。

それに比べて若き日のダン。詳しくは読んでみてほしいのですが、お酒で失敗したり、なんとなくプロにもなりきれなかったり、プロになってからも広告契約をはじめ色々あったり…。極めつけはプロポーズのエピソードでしょうか。ちょうどラグビー選手がアマチュアからプロフェッショナルになる過渡期ということを差し引いても、ときに微笑ましく、ときにいい意味で呆れてしまうような、あまりに人間的な、等身大のエピソードが繰り広げられます。また、クライストチャーチ地震、そして怪我との戦い…特に2011年の際の描写には、読んでいる側も辛くなるような、生身の痛さも感じられました。

 

もちろんこうした自伝はライターさんがいて、その人がどういう見せ方をしたいか、どういう切り口をしたいか、意図があると思います。もちろんそれはまとめられる本人の「語り」の内容も大きくて、その意味では本人の「魅せたい自分像」もあるでしょう。悪い意味ではなく、それも含めてその人の自伝なのだと思うのです(何周回ってのメタの話なんだよというツッコミはさておき)。また、彼の人生はまだまだ続きます。今後どういうタイミングで読まれたとしても、残るものとして作る難しさもあるでしょう。

それらも踏まえて、こういう見え方をすることを意図した、という点でも大変興味深い内容だったと思います。

 

先日ご紹介したリッチー・マコウのものとも合わせてよんでみるのも面白いはず。ボリュームもあって読み応えもばっちり。

ぜひじっくり読んでみてください。

 

6月25日、スコットランド戦を終えて…。スタジアムの運営とか交通事情とか。

6月25日、味の素スタジアムでの2016年春シーズンのテストマッチ最終戦、スコットランド戦が終わりました。結果はすでに各所で報道されている通りです。連敗。

 

試合展開としては、スコットランドはバテバテだったにも関わらず、メンバー構成的に主力メンバーを温存し後半勝負を仕掛ける、というゲームプランが完璧に遂行されたのに対し、ジャパンは足こそ止まらなかったものの、後半になればなるほど単調な攻撃→ミス、ターンオーバーを繰り返してしまった、という印象(個人的に)。

もちろん、これまでにないチームの体制、ましてセレクションにすら関わらせてもらえなかったハメットを責めることはまったくできず、選手も精一杯やったし、こんな状況でもカナダには勝ち、スコットランドと競ることができた、と評価することも可能です。しかし、なぜこんな状況で大事な春シーズンを終えてしまうことになったのか。まして天覧試合となったスコットランドとの第2戦に勝っていれば、今回3.4万人だった観客はさらに…という期待も持てただけに、まさか運営側は接戦になったし最多のお客も集まったから、と結果に満足してないよね?と問いたい。なぜこういう体制で春シーズンを迎えざるを得なかったのか。スーパーラグビーへの参戦は去年から決まっていたことで、わかっていたにも関わらず、そのまま迎えざるを得なくなってしまったのは、どこかで仕方ない、という判断をしたはず。

「初めてのことだから、色々考えて対策しようとしたけど、うまくいかずにこうなってしまった」というなら、どういう対策をしようとしたのか、それがなぜうまくいかなかったのかをきちんと総括し、ファンにも説明して欲しいのです。担当者はつらいけど。でも同じことは二度とできません(一度だって本当はダメだと思う)。

 

と、まぁこの話はいったんここまでにして。

もう1つ気になったのは25日当日のスタジアムの運営体制や交通手段の話。いろいろありました。当日私はストリートラグビーの取材で早くから味の素スタジアムに入っていたため、直接目にした部分は限られているのですが、ちょっと整理しておきます。

 

 

1.来場までの話

なんと言っても大きかったのはこの話。

www.daily.co.jp

 

味の素スタジアムの最寄り駅である飛田給駅に向かう京王線が、まさかの人身事故。当日は臨時で準急、特急を停めるなど、この試合に合わせて準備していたこともあったにも関わらず、最悪のタイミングで起こってしまいました。

時間もちょうどキックオフの1〜1.5時間前ということで、記事にもあるように間に合わなかった人たちも出てしまいました。

ただ、なんらかのトラブルで列車が止まってしまう、というのはあり得る話です。ちょっと原因は違いますが、私も昨年のイングランド大会のスコットランド戦、グロスターに向かう途中の列車が乗換駅でこんな体験をしました。ロンドンから10両ぐらいの特急でその乗換駅に着いたのですが、そこで待っていた列車はまさかの3両!とてもじゃないけど乗れない。ここはインドか、と思うぐらいのすし詰め状態に岩渕GMの姿を発見したのもいい思い出です。なんとか英語のアナウンスを聞き取って臨時バスが出ていることを知り、さらにたまたま近くにならんだ日本人とタクシーを掴まえて相乗り、グロスターに無事たどり着いたのですが(疲労困憊の岩渕さんにもすれ違いました)、要は代替の交通手段があるのか、ということと、アナウンスがきちんとされたのか、ということ。

後でも触れますが、帰りこそ小田急、中央線に向かうシャトルバスがありましたが、行きは京王線のみ。都心の新宿からはほかの交通手段がありません。また駅や車内のアナウンスも、私は居合わせていないので今回は分かりませんが、日常では人身事故に関するアナウンスが英語でなされているのを聞いたことがなく、おそらくなかったのではないかと。

本番は5万人来て、半分は海外の方…となり得るわけで、なるべくトラブルの少ない交通手段を複数準備しておくこと、また何かあった時も含めてアナウンスの多言語対応は必須でしょう。それこそ「おもてなし」だと思うのですが。

 

 

2.来場してからの話

この日は代表戦初の天覧試合。ということもあって、普段よりも厳重な警備体制が引かれていたようです。ペストリアンデッキからスタジアムへの入り口(④)で手荷物検査があり(あまり厳密ではなかったようですが)、さらにスタジアムのコンコースに入るのもメインとバックで1か所ずつ。

で、何が起こったかというと、当たり前ですが長蛇の列。コンコースに上がる階段で人が殺到すると危ないので、人数を切りながらやるわけですが、手で1枚ずつもぎるもんだから時間がかかる。さらにイベントをやってた味パンダ広場からだと、列の最後尾に行ってもどこに向かう列か分からない。案内は拡声器のアナウンス(もちろん日本語)のみ…ということで、看板ぐらいは持たせてほしかったなぁ。

 

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味の素スタジアム公式ページより 

 

あと中の売店ももう少し何とか…。紙コップに350mlの缶ビール移して550円はちょっと…。しかも慌てて入れるもんやから泡だらけで、買ったほうも悲しければ、それを責められる売り子さんもかわいそうでした…。食べ物もなんだかなぁ…というものが多かった。

ただでさえ駅からスタジアムへの道中には食べ物を買える店も少ないし、持ち込みも制限せざるを得ないなら、味パンダ広場に呼んでたキッチンカーももっとうまく連携できるとよかったと思うのですが(中には再入場をうまく使って買いに来てた人もいました)。

 

3.帰るときの話

シャトルバスの出口がわかりやすく、駅とは別方向になってたのは、駐車場の関係だけかもしれませんがよかったです。が、ここでも出てくるのはやっぱり英語対応…。3方向に向かうバスの列も明確には仕切られておらず、違う列に並んでしまう人も、日本人でもチラホラ。人の様子を見ながらバスを回したり、運行自体はわりとスムーズな印象だっただけにここだけが残念でした。

飛田給駅のほうはどうだったんでしょう?人身事故の影響は残ってたのかなぁ。 

 

 

色々書きまして、なんだか文句ばっかりみたいになりましたが、そういう悪かったところもあったけど、もちろん良かった点もあったと思うし(往々にして良かった点は見えづらい)、うまく豊田スタジアムの話も含めて日本中のスタジアムで情報をシェアして、2019年に備えなくてはなりません。

少なくとも代表戦で「3万人が集まるようになった」という前提で、考え方をバージョンアップする必要があります。秩父宮で1万人、ではなくなってしまった。野球やサッカーのときはどうしているのか、など他の種目・競技からも学べることもあるはず。今回天覧試合になって、いつもと勝手が違う、という面もあったかもしれませんが、それこそワールドカップ本番なら国賓を迎えることもあるでしょう。

 

本番まで、機会が限られているのは迎える側も同じだと、そう思うのです。初めてのことだから、うまくいかなかった、はこれで最後にしてほしい。