休日にライターのようにラグビーの取材をすることもある(けど最近お休み気味)

平日は私企業で営業マン、休日は時々ラグビーイベントとかの取材をしている30代男性のブログです。でも最近は本とか映画とかの話が多いです。

サンウルブズに思うこと。

2016年4月23日、サンウルブズの初勝利を見届けました。見ていて熱くなる試合、喜びと、ほっとしたような気持と、そして次戦への期待……となっているわけですが、チーム発足、そして連敗中に改めて出てきていた疑問が消えたわけではありません。試合での戦略、戦術、細かいプレーの選択……そういった話ではなく、勝ちが得られない中で改めて考えてしまった、「サンウルブズというチームってそもそも何を目標にしているんだっけ?」という話です。

1つの勝利がもたらす喜びの大きさで埋もれてしまわないうちに、あらためてサンウルブズというチームについて思うところを整理しておきたいと思いました。

 

 

まず、サンウルブズの第一の目的は、参戦前から岩渕GMが言うように、2019年W杯とその後をにらみ、ティア1と呼ばれる強豪国とのテストマッチが難しい中で、レベルの高い試合を少しでも増やすことを通じ、代表を強化していく、ということにあると考えています。

では本当に代表の強化につながっているのでしょうか?まずチームという目線では、現時点でこの目的が達成されているのか測ることはできないでしょう。4月30日からはじまったアジアラグビーチャンピオンシップ、6月にはスコットランド戦、11月…とテストマッチも予定されていますが、現時点では中竹氏がHCを代行、次期HCのジェイミー氏は9月から、という状況ですし。

※アジアラグビーチャンピオンシップは、当初6月のU20チャンピオンシップに向けてそのカテゴリの選手たちを中心としたメンバー構成で挑む予定でしたが、「色々あって」サンウルブズでなかなか出場機会を得られていない選手、あるいはサンウルブズも含めてスーパーラグビーに参加していないオーバー20の選手も加わった編成になりました。6月のスコットランド戦も含めたアピールという側面もあったからか、点差が開いても締まった試合になっていたように思います。そういう意味では全体の底上げにはつながっていると言えるかもしれません。

 

ではほかの要素ではどうか。チームとしてのレベルアップを見るのは難しいと思うのですが、個人にスポットを当てた時、2015年大会のメンバーから、次の世代・新たに代表となってほしいと思える選手は見えてきているでしょうか?例えばトンプソン=ルークが代表引退を明言し、「特別な人」均ちゃんにいつまでも頼れないロック。4年間、ほとんど五郎丸しか務めなかったフルバック……。残念ながら現状ではサンウルブズスタート前からITMカップで活躍していた茂野を除けば、カークがジャパンを選んでくれたらいいな、ぐらいの発見しかないのが正直なところではないでしょうか。笹倉や山下らをフルバックで試せていないこと、スタンドオフ、センターを務める面々が年齢層も含めて固まりがちなのも気になります。

もちろん、ここにはそもそものチームメンバーの話もあり、現時点でハメッドHCを責める話でもなく(まずもってセレクションに関われていない)、勝つためのメンバーを選んでいく中で2015年メンバー以外の選手がなかなかポジションを奪えてない、という問題もあれば、ケガの問題もあるでしょう。育成と勝利を両立していくのはどんな種目のスポーツ競技にあっても、難しい問題です。例えば前節対戦したジャガーズは、サンウルブズに敗れ、シーズン前はプレーオフ争いのダークホースと呼ばれながら、いまだ1勝しか挙げられていない苦しい戦いが続いています。一方でチームに登録したメンバーのほとんどが1度は試合に出場しています。これはチームとしてアルゼンチン代表を強化すること、が第一の目的にあって「少しでも多くの選手に自分たちが到達したいレベルを体験させよう」という意図が現場と運営側で共有されているからこそできていることなのではないでしょうか(根拠となるようなインタビューや記事はないのですが…)。

ようやく1つ勝てた今、次節以降をどういったメンバーで戦っていくのかが、この要素をどう評価していくかのポイントになると思います。それによって、チームとしてどういう優先順位を持っているのか明らかになってくるのかな、と思います。そのとき、ハメッドHCら現場、チームを運営するジャパンSR、そして日本協会で違う方向を向いていないことを祈るばかりです。「プロの指導者として勝利が最優先」は決して自明のことではなく、プロであるならばなおのこと、チームとして「どこを目的地とするかを共有できているのか」という話ではないかと思うのです。

 

 

そうした話にもつながって、もう1つ気になってくるのは来期以降のサンウルブズです。選手、コーチ、スタッフ全員にかかわって、きちんと「残りたいチーム」になれるような体制づくりは進んでいるのでしょうか?

例えば、キャプテンの堀江は「ほかにもいいオファーはあったけれど、日本のラグビーのためにという思いでサンウルブズを選んだ」という趣旨の発言をしています。これって日本のスポーツ新聞なんかが大好きな「男気」なのかもしれないですが、健全な話ではないですよね。それこそ選手個々の男気に頼って、いつまで続けることができるのでしょうか。

参加カンファレンスが南アフリカになってしまっていることに起因するような問題は難しいかもしれませんが、ワールドカップ前にエディーとの衝突の一因になったという選手の待遇(サンウルブズだけではなく、日本代表も含め、ですが)は改善されるのでしょうか?あるいは、一部で指摘されているような選手に練習時間変更の連絡が来ないという信じられないような運営体制の問題。さらに重大な日本代表との関連性……代表選手はサンウルブズに、という話はどうなっているのでしょう。特に最後の問題が9月以降まで置いておかれたとしたら、代表を第一優先に考えている選手がこの話が決着する前に他チームからオファーを受けた場合、どう考えればいいのでしょう。

 

 

ワールドカップ直後の今期、なかなか時間が取れなかった家族のことを優先した選手の選択も、来期は状況が変わることもありうるでしょう。カンファレンスを移れないか、といった話もしてはいるようです。発言力という意味ではチームが強くなることも優先しなくてはならないでしょう。まして、契約の話や運営の話は、試合や競技そのものではない以上、表に出ない、出せないこともたくさんあって当たり前だとは思います。

私自身、フルタイムでラグビーに関われておらず、ましてサンウルブズや代表などの取材は行っていないため、得られる情報に限りがあるのが正直なところです。加えて今回挙げた疑問、とくに後者の来期の話は今すぐ何か動きがあるとは思えません。しかし、だからこそ、これらを1つの勝利で忘れることなく頭の片隅に置いておきたいと思うのです。

 

 

最後に、少しだけですがサンウルブズについて考えるためのヒントになりそうな記事を。

 

サンウルブズ、山田章仁&真壁伸弥の追加招集が日本人じゃない…って、違うから!【ラグビー雑記帳】(向風見也) - 個人 - Yahoo!ニュース

 

代表強化担当者に聞く日本ラグビーの未来19年のW杯に向けたプランと展望 - スポーツナビ

 

4月28日(木)報道ライブINsideOUT エディージャパンを越えろ!日本ラクビー次の一手とは - YouTube