観る側の愛が溢れるエッセイ集/スポーツに恋して。篠原美也子
シンガーソングライターの篠原美也子さんという方が、写真家・ノンフィクションライターの宇都宮徹壱さんという方の有料メールマガジンに月一で連載していた「篠原美也子の月イチ雑食観戦日記」というコーナーを主体にした「スポーツ観戦エッセイ集」。
申し訳ないのだけれど宇都宮さんだけでなく、篠原さんについても存じ上げず、ただただ棚に並んでいるときのタイトルと表紙に描かれた2015年ラグビー日本代表のイラストに惹かれて手に取った一冊。
内容としては、サッカー、テニスをはじめ、ラグビーやゴルフ、ボクシング、野球、駅伝と幅広くスポーツを愛する篠原さんが、自身の観戦や息子さんのサッカークラブのことなどがつづられています。文章は比較的読みやすく、ライトなエッセイ、というとなんだかあっさりしている風に感じられるかもしれませんが、しかしこの人のスポーツに対する気持ちが読ませます。
白眉は息子さんのサッカークラブでの話をメインにつづられる2章「母は今日も観る」。「うたかたロックンローラー」と題された何編かは、スポーツをやる意味だったり、子供に秘められる無限の可能性だったり、いろんなものが詰まっています。本人もあとがきに書いている通りえてして「いい話」で終わってしまいがちな子供を題材にした話も、決して単純にそうではなくて、「意味がある・ない」「メリットがある・ない」で言い表しきれない人生の機微みたいなものが、そこにはあるんではないかと思わせる内容でした。
あえて苦言を呈すならばそれぞれのエピソードが書かれた年月が知りたかったということと、この表紙のカバーは反則だろうということ。
ラグビーの話はほとんど出てきません。秩父宮だったり、国立競技場の話はあるけれど、ワールドカップイングランド大会の話はありません。ゆえに、特にカバーに関してはどうかと思うのですが、それを差し引いてもいい本読んだな、とは思っているのです。