休日にライターのようにラグビーの取材をすることもある(けど最近お休み気味)

平日は私企業で営業マン、休日は時々ラグビーイベントとかの取材をしている30代男性のブログです。でも最近は本とか映画とかの話が多いです。

世の中の基盤をデザインする/法のデザイン 水野祐

 ゲームじゃないリヴァイアサンの、「万人の万人による闘争」という言葉を習ったのはもう十数年前になってしまうけれど、社会のルールとしての「法」は私たちが生きていくには欠かせないもの。そしてそのルールは時代とともに変わっていく。

単に変わっていくのではなく、ルールを「超えて」いくというマインドで、ルールがどうあるべきかを主体的に考え、関わり続けていくというスタンスで、アフターインターネットの現代社会において、法を取り巻く環境について弁護士でもある著者の考察をまとめた一冊。

法のデザイン?創造性とイノベーションは法によって加速する

法のデザイン?創造性とイノベーションは法によって加速する

 

 本書のポイントは2つ。1つは通奏低音である「リーガル・デザイン」という考え方。ざっくりいうと、法律や契約を主体的にデザインする、そして単に規制・制限するものではなく、促進・ドライブするためのものとしてとらえよう、というもの。それは単に「新たに法を作る」上でのデザインだけではなくて、どう解釈・運用するかという話にもかかわってくる。高度な情報化社会において、どんどん生まれていく新たなサービスは、現行法が想定していないところを突いてくることもしばしば。法整備が追い付かないとなると、その解釈や運用の「余白」や「ゆらぎ」が大きくなる。そこを私人の側からも作っていこうよ、という思想も入っている。

もう1つは主に第2部で解説される、音楽、二次創作、出版、アート、写真、ゲーム、ファッション、アーカイヴ、ハードウェア、不動産、金融、家族、政治という13のテーマの特に法に関わる部分での現況。これら13のテーマの中には、それこそインターネットがもたらした劇的な変化の中で、見方によってはグレーゾーンな部分を生かしたイノベーションがあったりする(「金融」では仮想通貨、「不動産」ではAir BinBなどにも言及されている)。各ジャンルで起きていることも違えば、これまでの慣習、ルールも違う。ただそこでどういう解釈がされているのか、というところまで含めて、日本だけではなく世界中の動きも簡潔に、しかし要点を抑えて説明しています。ゆえに、法律の部分はもちろん、これらのテーマで「今どういうことが起こっているのか」を知る上でも役に立つという、非常にありがたい本でもある。

 

水野氏自身には、本書にも掲載されているアーティスト集団Chim↑Pomが2011年に立件されたときに検察庁に提出した意見書をはじめ、多くのアーティストとの関わり、あるいはクリエイティブ・コモンズ・ジャパンの活動などのイメージがあったけれど、ITやまちづくりなど、幅広い分野にわたって活躍されているのだな、というのも実感した1冊でした。