休日にライターのようにラグビーの取材をすることもある(けど最近お休み気味)

平日は私企業で営業マン、休日は時々ラグビーイベントとかの取材をしている30代男性のブログです。でも最近は本とか映画とかの話が多いです。

正しさの危うさ/ブレグジット秘録 クレイグ=オリヴァー

2016年6月23日。イギリスがEU離脱をめぐる国民投票を実施した日。そこに至るまでの半年間を、「政務広報官」という立場で過ごした著者による、記録。

 

ブレグジット秘録 英国がEU離脱という「悪魔」を解き放つまで

ブレグジット秘録 英国がEU離脱という「悪魔」を解き放つまで

 

600ページを超えるボリュームで記された本書は、本当に日記というか、記録。残留側の最前線に立って活動した彼が、国民投票までの半年間に何をどう見て、何を感じたか、ということが生々しく伝わってくる。背景には国民投票をそもそも公約にしていたこと、いつかは通らざるを得ない道だったこと、労働党スコットランド独立党との絡みをはじめとした「国民全体の問題」にすることの難しさなど、いろんな話が絡み合っているのだけれど、一番重たいなぁと思うのは、報道に関する話。

 

「公平性」のために、離脱派、残留派両方の主張を紹介する。しかしその主張の根拠が間違っていたら?速報性を重視するために十分な検証がなされていないとしたら?一度ニュースになったものが広がったあと、報道番組、専門番組で訂正されたとして、それを見る人はどれぐらいいるのか?日本でなら、ヤフトピに出た話が間違っていたら?文春の話に根拠がなかったら?スマイリーキクチさんの問題もあったけれど、これから問われるのは、例えば憲法が絡んだり、社会保障が絡んだり。現代における「事実」の扱いの難しさをまざまざと見せつけられる、突き付けられる。

 

ブレグジットからアメリカの大統領選挙、2016年の言葉は、確かに「Post Truth」だったのだと痛感するばかり。その中で、どう情報を受け止めるか、そしてどう発信していくのか。そういう話を現代を生きていく上での最低限のリテラシーとして、社会を構成する「みんな」が身につけることができているのか。突き付けられているのは、大きな問いだ。