休日にライターのようにラグビーの取材をすることもある(けど最近お休み気味)

平日は私企業で営業マン、休日は時々ラグビーイベントとかの取材をしている30代男性のブログです。でも最近は本とか映画とかの話が多いです。

【読書】さよなら未来/あるいは変化を志向する勇気について

電撃的な退任自作自演インタビュー、読みたかった物流特集が出ないことがわかってから約4か月。「ついに出た」という感じ。

 

 

 

「エディターズ・クロニクル2010-2017」のサブタイトル通り、過去に執筆されたものの集大成、なんだけれど、例えばWIREDの序文でも雑誌の時のデザインとこの本のデザインとでは見え方も変わる。肝心の内容は、詳細まで落とし込むとテーマは多岐にわたるけれど、通して浮かび上がってくるのは、「若林恵」という人の勇気なんだろう。

復活後のWIREDもテーマによって買ったり、買わなかったり、dマガジンで読んだり、ぐらいだったわけですが、Twitter見てる限り、そういう人もけっこう多くて、そういう人ほど「なんだか読まなきゃ」ってなっているパターンが多い気がする。

 

読み終えたのはもう先週の話で、レビューもさっき挙げたような人がたくさん書くんだろうなぁと思ったりしていたのだけれど、おりしも、竹熊さんのライター本をきっかけにしたのか、日本のネット住民の年齢層がだいぶ上がってきたのか(少なくともインターネットで「テキスト」を嗜好する人の年齢はだいぶ上がってそうだ)、40代を超えてから変化をすることのしんどさみたいなのをぶっちゃけるものをいくつか目にすることがあって、あぁもしかしてこういうことなのかな、という気がしたので、それはまとめておこうと思って書いている。

 

fujipon.hatenablog.com

20代から30代前半の頃は、「ここで我慢してがんばっておけば、この先、きっとプラスになる」と自分に言い聞かせることができた。
 でも、40を過ぎると「ここで我慢したって、もう、天井は見えてるじゃないか。もう、この先にいいことなんてそんなにないんだから、言っちゃえよ、やっちゃえよ」という、自分の内なる声が聞こえてくるのです。それと「いや、ここでレールから外れたら、お前はもうどん底まで落ちていくだけだぞ。家族にも迷惑がかかる。なんとか踏ん張れ」という抑制の声が、つねに闘っている。

自分はまだ30代も3分の1を超えてもいない状態ではあるのだけれど、何となくこのブログに書いてある感じはわかるところがある。話は飛んじゃうけど、「子供はいいよー」みたいな話も出てくるのも、成長していく姿、できないことができるようになるのを間近に見れるよろこび、快楽みたいなのが背景にある気がする。

 

話を戻して、そういうこの先の自分をめぐる危ういバランスに気づいたとき、自分を含めてたいていの人は、違うベクトルでがんばるか(例えば子育てとか)、気づかないふりをするか、なんとか踏ん張るか(知らんふりするのもこの枠かな)、という話になると思う。

で、この本にまとめられているのは、そういう気持ちのときに踏ん張るどころか、「いや、でもさぁ」と踏み出してきた記録なのだろうと思うわけです。あるいは、そんな気持ちにすらなってないのかもしれない。実際に若林さんと会話をしたことがあるわけじゃないから、そこまでは分からないけど。

なんとなくこの先……みたいなことを考えたときに、東京で消耗するのが嫌になって田舎に行ったり、ベンチャー立ち上げて一旗上げてやる、でもない。YouTuberで好きなことで生きてくわけでもない。真摯に自分のやることと向き合って、流すことをやめて。そういう現実と向き合ってく勇気。そしてそれは周りのそういう人を応援していく勇気でもある。

 

なにか新しいこと、人とちがったことをするには勇気がいる。それは、なにか新しいアイデアをもった人だけに限らず、それをともにつくったり、それを伝えたり、あるいはそれを教示する側にも、勇気を強いる(中略)「新規事業開発」の部門についていえば、おそらく一番勇気を必要とするのは部下の勇気を評価する上司だ。冒険を尊ぶ社会では、みなが冒険をしなくてはならない。勇気には、勇気をもって応えよ。

(P281 「音楽にぼくらは勇気を学ぶ」)

 

自分は今、勇気を評価してもらう立場にあるのだろうと思うと、それに賭ける勇気を持ってもらえるように、相手が理解できるようにその根拠を示さなくてはならない。もし自分が将来、そういう立場になったときは、その勇気を認めることをためらわないようにしたいとも思う。

 

とはいえ、こういう気持ちをいつも持ち続けることはなかなかできないもので。ゆえに若林さんの記録は尊くて、ゆえに自分は折りにふれてこういう本で勇気をドーピングするんだろう。

それこそ、いつでも未来に驚かされていたいから。

 

※物量的な大変さももちろん、編集者の本を編集するという、思いっきり自分を試される行為を経てこの本を世に出してくれた、編集担当の岩波書店・渡部朝香さんの勇気も尊い