休日にライターのようにラグビーの取材をすることもある(けど最近お休み気味)

平日は私企業で営業マン、休日は時々ラグビーイベントとかの取材をしている30代男性のブログです。でも最近は本とか映画とかの話が多いです。

【読書】Bリーグ立ち上げの話を書いた本がすばらしかったのでトップリーグ関係者も読んでほしい/稼ぐがすべて

タイトルはなかなか強烈ですが、しかしスポーツ愛も感じさせる一冊です。

稼ぐがすべて   Bリーグこそ最強のビジネスモデルである

稼ぐがすべて Bリーグこそ最強のビジネスモデルである

 

 Bリーグ、正式名称公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ事務局長の葦原一正さんによる、Bリーグ立ち上げとやったこと、これからのこと。

2016年秋の開幕に向けて、わずか1年あまりの準備期間。その間にビジネスとしてのポテンシャルを分析し、入場者目標を掲げてBリーグは走り出しました。柱となったのは「権益統合」と「デジタルマーケティング」という2つの手段。その背景と詳細がまとめられた本書は、まさにスポーツビジネスに関わる人におすすめしたい、わずか1,500円+税で手に入る最高の参考書だと思います。

 

特に面白かったのは、自分の本職に近い領域ということもあるかもですが、【顧客情報をリーグで管理してCRMに活用する】という「リーグ統合DB」の部分。まさにこれからのサブスクリプションビジネス*1の時代にもつながる「そうあるべき」手法で、ファンと長期的な関係を築く土台。SNSを始めとする様々なデジタルでの施策を実行して、リアルにつなげるための骨格になるところです。各チームのWebサイトのフォーマットも統一し、1IDですべてのクラブのサービスが使えるという仕組みも設け、放映権ビジネスに限らず、チケットを売るビジネスにおいても、リーグとしての全体最適につなげていきます。

DBがあれば何ができそうか、を本で出てきた話以外でも少し考えてみると、例えば私自身がラグビーでなんとかならないかなぁと思うことですが、コアなファンが誰かを連れてきた時の特典なんかも実現しやすそうです。誘われて観戦に行く人もID登録して、その時に誘ってくれた人のIDを入力するとお互いに特典がある(応援グッズがもらえるとか、5人以上誘うとチケットがもらえるとか)みたいな仕組み……しかも統一IDなら誘う側・誘われた側が別チームでも作れる。まさに今ならではのWebマーケティングの醍醐味!!

 

 

タイトルの「稼ぐがすべて」という言葉は、今までのスポーツ団体では何となく避けてきたお金の話こそ、「事業」として=ビジネスとして何とかなることであり、今までスポーツのサイクルとして言われているような普及→強化→事業というサイクルではなく、事業としてうまくいくからこそ、強化や普及ができるのだ、という葦原氏の考えに基づくもの(「すべて」というタイトルになると、稼ぐことが「目的」になっているようにも読めてしまいますが、そうではない、スポーツの価値とは?という話も出てきます)。

がんばって普及すれば、そこからいい選手が出てきて、強くなって人気が出れば、いつか事業として収益が成り立つ……本当にどこかで聞いたような話ですが、ラグビー好きとしては耳が痛い話。本の話からは逸れますが、2015年ワールドカップのあと五郎丸選手をはじめとする猛烈なラグビーブームを活かすことができないまま、2019年を迎えようとしているトップリーグを思うと、モヤモヤに突き刺さるものでした。

2019年ワールドカップのあとのトップリーグのことを想像してみたとき、企業にもかなり負荷が大きいと思われるラグビー*2を、いつまで続けてくれるのか……チケット収入:スポンサー収入の比率がほぼ0:100のようなリーグ*3は、ワールドカップという大きな祭りが終わった後に、企業が続ける価値を見出せるリーグになるのだろうか。今のままでは早晩立ち行かなくなるのでは……と、何の根拠があるわけでもないのですが、思うのです。

2019年の後、何かの形でリーグが再編されるのであれば、土俵際の最後のチャンスにはなるかもしれない*4。来るべきトップリーグ再編の時に、この本が活かされることを祈るばかり……と思ってたら、こんな求人も。employment.en-japan.com

私はこの本を読む前に安易な気持ちで応募して、すでに書類で落とされているけれど*5、ぜひ志高い方、デジタルマーケティングに関わってる方、応募いただいて、その知見を、ラグビー含むafter 2019,2020の日本のスポーツビジネスに役立ててください。お願い。

*1:サブスクリプションの話はこの本が面白い

サブスクリプション――「顧客の成功」が収益を生む新時代のビジネスモデル

サブスクリプション――「顧客の成功」が収益を生む新時代のビジネスモデル

 

*2:チーム単体の収支とかは私は伺い知らぬのですが、どこも余裕があるとは思えない……のわりに毎年大物外国人選手もやってくるのでもしかしたら儲かってるのかもしれませんが

*3:初年度のBリーグJリーグは1:2、NBAだと2:1だそうです

*4:Bリーグは0からのスタートであったからこそ、ここまで紹介したような仕組みを作れた、という要素もあったと述べられています

*5:しかし書類で落ちているので本を読んでいるからと言って結果が変わったとは限らない