【読書】知らなくても生きていくには困らないけど、知りたくなる魅力/21世紀中東音楽ジャーナル
新婚旅行はトルコに行った。2013年のこと。美しいモスク。路地裏で食べた美味しい料理。イスタンブールはまた行きたい街の1つ。
そのトルコ旅行のさなか、たしかエフェスだったと思うんだけど、買ったCDがある。その名もまんま「HIT 2012」。古い友達が、外国に旅行に行ったらそこでベストヒットのオムニバスCDを買うといいと思う、という話をしていたのを真似した。
1曲目がこれ。
ちなみにこちらのTARKAN氏はドイツ逆輸入の超売れっ子アイドルらしい。
確かホテルとか、街中でもこの人のPVが流れてて「へぇー、けっこうイケイケなんやな」ぐらいのことを思ったのを覚えてるんだけど、プロフェッショナルである著者のサラーム海上さんのことを知ったのはもっとあとになってからだ。
で、今回読んだのがこちらの本。
私がトルコに行った時期よりもちょっと早い時期ではあるんだけど、サラームさん自身が実際に足を運んで、出会った音楽の記録。2002年のトルコ・イスタンブールからはじまって、2004年のモロッコ、ふたたび2005年にイスタンブール、2007年イエメン、2009年に本書では三度目のトルコ・イスタンブール。そして2011年のエジプト。
いわゆる伝統音楽だけじゃなくて、それが今どんな形で人々の中で聞かれているのか、がサラームさんの興味の対象。出てくる多士済々のミュージシャンは、Spotifyでも聞ける。それらを聞いてみるだけでも、単純にこんな音楽が、こんな世界があるんだ!という驚きと新しい音楽世界に足を踏み入れる喜びに満ちる。
折しも2011年は、まさにサラームさんが出くわしたエジプトの革命をはじめ、中東という地域のバランスが一気に変わった時期でもあって……という世の中の動きに加え、YouTubeやSNSなどによる音楽との接し方の変化が生まれ、ある種世界中が「つながった」ようなころでもあって……という文脈でも、2000年代を振り返り、あと2年余りとなった2010年代のこれから、そして2020年代を見通すヒントになるかも。
2011年から7年経って中東地域の状況は大きく変わった。ISISの出現、直近でもリラの暴落の話が出ているトルコも、数年前からなんとなくきな臭い。本書に出てこない国でも、シリアの状況、イスラエルの火種はもっと大きくなったように思う。
それでも発信されるドキュメンタリー映画などで出てくる若者たちは、それこそおかれている状況の厳しさは比にならないけど、音楽の楽しみ方なんかは日本の私たちと何が違うんだろう、と思えるくらい。YouTubeだけじゃなくて、定額配信サービスも、トルコやレバノン、サウジアラビアなどでも提供されている。
その後、何が起こっているのか。最新刊のこれも、ぜひ読んでみようと思う。
ジャジューカの夜、スーフィーの朝 ワールドミュージックの現場を歩く
- 作者: サラーム海上
- 出版社/メーカー: DU BOOKS
- 発売日: 2017/12/22
- メディア: 単行本
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同じくエジプト・カイロで革命に居合わせた日本人の方の話。
やっぱりこの人を貼り付けとくべきなんだろう。