休日にライターのようにラグビーの取材をすることもある(けど最近お休み気味)

平日は私企業で営業マン、休日は時々ラグビーイベントとかの取材をしている30代男性のブログです。でも最近は本とか映画とかの話が多いです。

【読書】メディアとしての紙の物語/紙と人との歴史

紙と人との歴史:世界を動かしたメディアの物語

紙と人との歴史:世界を動かしたメディアの物語

 

中国を専門とするイギリス人ジャーナリストによる「紙」の歴史をまとめた大部。

 

中国で発明された紙が、どのような使われ方をして広まり、それが朝鮮半島、日本へどう伝わったか。そして中央アジアを経由してアラブへ、イベリア半島も経由してさらにヨーロッパへ。最後は近代社会へ。


紙を使って文字を書くこと=識字の社会となること、固定された意志や考えが広まっていくことであり、宗教的なもの、政治的なものを問わず大きな変革をもたらすきっかけにもなることを通奏低音のように描いていく。


紙によって実現したもっとも偉大な発明であるコデックス装の、綴じるタイプの本について、著者はあとがきで現代における状況についても触れている。曰く、単に所有欲を満たすための美しさや見た目にこだわることはその本質ではないという。紙の持つ表現力はディスプレイのもつそれとは同じではない。劣るところもある。しかし、フィジカルに所有することができる。そして時代を超えて、それが書かれた時の姿のまま受け継がれていくことも、著者がこの本で描き出した紙の魅力そのものだろう。

 

15世紀にシャー・ナーメの写本を作るためにかかった費用の4分の1以上を占めるほど高コストだった紙の調達がいつしかどんどん安価になってたり(このケースはそれ用に輸入したりしたから、という事情もあるのだが)、その時の商習慣がそのまま英語で紙の単位を表す「Ream」⇒日本の「連」へ、というような小話もたくさんあって、面白い。