いい意味で「Numberらしい」-エディー・ウォーズ
Numberといえば、山際淳司さんから綿々と続く「スポーツ・ノンフィクション」というジャンルというか、文体があると思います。いい意味で彼らの掲げる「Suports Graphic」が競技そのものだけではなく、「人」にもベクトルが向いている、そういうイメージがあります。
本誌でも連載されていたエディー・ウォーズはまさにその「Numberらしさ」があふれた一冊でした。
プロローグは南ア戦のラスト、ショットではなくスクラムを選択した選手たちにエディーが声を荒げるところからスタート。そして彼の人柄が様々なエピソードや周囲の証言、ワールドカップまでの足取りとともに振り返られ、スーパーラグビー参戦決定後の話、最終選考の話、退任発表の話、そしてワールドカップ。選手はもちろん裏方として活躍した方たちの話も交えながら、描かれていきます。
思わず目が熱くなる描写の数々。Numberなんだから、もう500円高くてもいいから単行本でなく写真も交えたつくりでもよかったのでは、なんて気もしなくはないですが、これはこれで自分の頭にいろんな絵を思い浮かべながら読める。生島さんさすがだなぁと思うわけです。
斉藤健仁さんの「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」では丁寧に2012年からの4年間を追っているのに対し、本書では2013年のウェールズ戦や戦術面の話なんかはあまりウェイトが置かれていないように思います。それもまた、文芸春秋の本らしく、一方で斉藤さんの本もラグビーマガジンを発行するベースボール・マガジン社の本らしいなぁ、などと思ったりしています。
ワールドカップのあと、選手個人の本をはじめ、たくさんのラグビー関連本が出版されています。著者や出版社、そこが普段どういう本や雑誌を出しているかも、選ぶヒントになるかもしれません。