電子のみで出ている本を製本した話。
近頃(ずっと?)騒がれている電子書籍ですが、「デジタルのみ・デジタルファースト」
というコンテンツも目立ってきました。
つまり、「紙の本」ありきの電子書籍ではなく、
いろいろ考えた上で「電子だけで出す」「電子を先に出す」という選択をするわけですね。
最近ではオンデマンド印刷を使って、
発注をもらってから紙にしてお届け、というスタイルもあります。
さて、最近気になっていた「ツール・オブ・チェンジ」という「本」(あえてカギカッコをつけます)があります。
海外のO'Reilly Mediaの作ったものを、日本のボイジャーという会社が翻訳したもので、
内容としては、
世界中のトップ・イノベーターや出版ビジネスのエキスパートが集まるTOCカンファレンス(Tools of Change for Publishing)。そのコミュニティで日夜行われてきた議論を、イノベーション、DRM、オープン、マーケティング、フォーマットなど12のテーマに沿って読み進める。デジタルによる産業革命に直面する出版人および全ての企業人のための一冊!
というもの。
Tools Of Change for Publishingという集まりの発表論文集みたいなものでしょうか。
同じシリーズというか、前作として「マニフェスト 本の未来」というコンテンツもあります。
いろいろこれからどうやって本を作っていこうか、本の未来はどうなるだろうか、
といったことを考えている内容で、非常に幅広い切り口から検討されています。
で、この「ツール・オブ・チェンジ」は「電子版のみ」で、525円での販売なんですが、
これを印刷して紙の本にしちゃいました。
なんとなく面白かったので、出来上がるまでの経緯を整理しておきます。
そもそもなぜ紙にしようと思ったか
昨年電子書籍専用端末(SonyのReader)を購入し、スマホも持っている自分には、
確かにすでに電子書籍を楽しむ環境は十分に揃っていました。
この「ツール・オブ・チェンジ」ももちろん読むつもりで購入していたのですが、
読みかけのコレ、図書館から借りたアレ、とやっているとなかなか読む順番が回ってきません…。
つまり、物体になっている本のほうが確実に「次これ読もう」で回ってくる率が高い。
積読もたくさんあり、「物体としてあったほうが優先度上がるなー」という実感がありました。
これまでの習慣もあって、インターフェイス的にも紙のほうが読みやすい!と感じることもあります。
そんな中、会社の先輩が自炊を試したい!ってやってらっしゃるのを見て、
「逆もありやん!」と思いついたのがきっかけ。面白半分で製本してみようと思いつきました。
どうやったの?
PDFそのものは購入者特典でダウンロードできていたので、PDFを印刷→製本できればいい。
そこでまず考えたのがオンデマンドで本が発注できる三省堂のエスプレッソブックマシン。
ですが、調べてみたところ、決まった本から選ぶしかできない様子…。
それ以外にも近頃はネットで個人が発注できる印刷サービスというのがすごい増えてるので、
チラシやカタログ、フォトアルバムができるなら、書籍もあるんじゃね?と思って探してみました。
そこで見つけたのが製本直送.comさんというサービス。
PDFで入稿できて、2、3日で製本して届けてくれる、というサービスです。
製本直送さんがよかったのは、
・そもそもの設定も安かった
・ある程度細かい製本の設定ができる
・料金シミュレーターがあって、価格がある程度見える
という3点。
諸々仕様を設定してシミュレーションすると、1,000円ぐらい+送料。
これは!と思い会員登録させていただきました。
どういう仕様にしたのか
今回の僕の製本仕様はこんな感じです。
製本サイズ:A5
ページ数 :214ページ
綴じ方 :無線綴じ/左綴じ
本文用紙 :b7バルキー
本文の色 :モノクロ
表紙 :表紙カラー&ラミネート加工なし
以下仕様について気づいたことをつらつらと。
・サイズは新書版〜A4まで6サイズ既定のフォーマットがあり、
それに合わせてPDFを自動で拡大・縮小してくれます。
・ページ数は特に制限無いみたいです。9999ページ、とかでもシミュレーションできたので…。
単に数式に入れてるだけで、実際にやろうとするとエラーになるのかもしれませんが。
・綴じ方は中綴じ(ホチキス綴じ)も可能です。
無線綴じは綺麗に糊付けされて届きました。
・表紙で使われている紙はおそらくマットポストです。ラミ無しで作りましたが、
マットPP・グロスPPも選択可能です。ニスは非対応みたいです
(そもそもの表紙なしにも対応しています)。あとカバーも非対応。
・本文用紙は「b7バルキー」という紙にしましたが、風合いがあるっぽくできる「モンテシオン」や、
文庫本のようにやや黄味がかった「ラフクリーム書籍」とかもあります。
カタログ、パンフ用だと思いますが、A2グロス、マット相当の「PODグロス」「PDOマット」や、
平滑性の高い非塗工紙「マシュマロCOC」などもあり、元紙屋から見ても、一通り揃っている印象です。
発注するときにPDFをアップすると自動でトンボを付けてくれて、プレビューも可能です。
どこか変なずれ方とかしちゃうかなぁーと思っていたのですが、PDFがちゃんとしてたこともあってか特に問題なく、「オート表紙機能」という1ページ目と最終ページをそれぞれ勝手に表1と表4にしてくれる機能を使って、5分くらいで発注完了。23日に発注して、発送のお知らせがあったのが25日。
ヤマトのメール便で厚紙の封筒に入れて届けてくれました。特に納品書とかは入ってないです。
やってみて思うこと
製本直送.comさんに関しては「こだわった装丁」を自作することはできないけれど、
ちょっとした、簡単な製本ならお手軽にできちゃう、という印象です。
電子オンリーでしか手に入らないコンテンツを紙にできる選択肢が一消費者レベルでも簡単に選べることは、「読み方」の幅を拡げるいい機会なのではないでしょうか。もちろん法の定める範囲内でね。
で、本を出す側から見ても「電子だけ」にすることで価格を下げることができるのは(それで売り上げが下がるのではなくて、数が出て、結果売り上げが上がれば)、メリットじゃないのかなぁ、と。
結局そうなるとオンデマンド対応しようよ、ってな話になるのか・・・?
ちょっとこの辺のビジネス絡みのことはもっとゆっくり考えてみたいと思います。
ともかくも、今日はここまでー。