『後悔しない「産む」×「働く」』ための理屈はわかるけど、生きていきたいのは『生涯未婚時代』。
話題の持って行き方を間違えるのと怖い、センシティブな話。私は今年で32歳。まぁ、身の回りもパートナーはいるけど結婚には至ってなかったり、結婚してるけどDINKSだったり、逆にすでに子供もいて、すっかり親になってる子もいたり、と色々。
メンタル面の話のようでいて、しかし身体のどうしようもない部分も関わってくるよなぁと最近改めて感じるのが結婚だったり、子供だったりします。
「婚活」という言葉を生み出したこと自体の賛否はさておき、「少子化ジャーナリスト」の白河桃子氏が、国立成育医療研究センターで不妊治療などを専門とされる斎藤秀和氏とともに実施する「仕事、結婚、出産、両立、学生のためのライフプランニング講座」の内容をもとにした本を新書化したのが、こちら↓
なんと言えばいいのか。書いてることはわかる。細かい話はあるけれど、大意としてはどうしたって身体は歳を取る、だからそれを見据えて就職も、結婚も考えましょうね、という話。
でも、でも、「わかるんだけどそれができりゃ苦労しないよー」って。白河さんの意図したところなのかそうでないのかは分からないのですが、自己啓発セミナーみたいなノリというか、「そんな風に言って、自分の人生なんだよ!頑張って切り開いていこうよ!」(キリッ)って感じにあてられて、オーバー30はそうでなくても胸が痛い。20代前半ぐらいだと受け止められるのかもしれないけれど。想定読者もその辺なんだし、お前らに向けては書いてねえと言われることを自覚した上で、でもなんていうか、もう後悔するしかないよね、と宣言されているようでとにかくキツい。
で、そんな風に胸を痛めたあとに読めばよかった、と思った、同じ時期に発売された、家族社会学を専門とする永田夏来先生初の単著の新書がこちら↓
「逃げ恥」「おそ松さん」など、最近のドラマなども引き合いに出しつつ、10数年後には男性の3分の1、女性の4分の1が定義上の「未婚」で生涯を過ごすであろう時代を目前にその背景やどういうことが求められていくのか、といった話をまとめていきます。ここにはなぜ「後悔」してしまうことになっているのかの分析もあって、それが帯にある「同じくらい尊い」というスタンスであるがために読んでいくことができる。本書にたとえとして出される「ドラクエ型人生」がまさに白河さんの言う「後悔しない」であるとするならば、そうでない生き方もすでに当たり前になりつつあること、それを受け入れて進んでいくために、社会としてどうしていきましょうか、というのがこちらの本のスタンス。
もちろん、妊娠/出産はリスクとして紹介もされています。事実として身体はどうしたって歳を取る以上、シビアにならなくてはいけないのかもしれない。「産むこと」そのものを考え直してみましょうよ、なんて、目を逸らしているだけなのかもしれない。ただ、じゃあもう私たちには後悔するしか道がないのかと言われれば、そうではないと思いたい。そうではない社会としての、生涯未婚時代を生きていきたい、と思うのです。
結果は目新しいものでなかったとしてもーベストセラーコード 「売れる文章」を見きわめる驚異のアルゴリズム
サンウルブズが2年目の戦いを終え、スーパーラグビーもプレーオフに突入。個人的にはライオンズに頑張ってほしいのですが、次のハリケーンズ戦はなかなか厳しそうです……。
さて、よく「筋書きのないドラマ」と言われるスポーツ。選手個々のバックグラウンド、思いもよらぬ試合展開、そして結末、その後のエピローグなどが、時に多くの人を感動させます。そういった「感動」は、現代の消費社会において(その是非はともかく)、よく売れる。
一方でスポーツとは逆に、「筋書きのあるドラマ≒小説」において、よく売れる「筋書き」があるのかを統計的な手法を用いて分析した結果をまとめたのがこの本です。
ベストセラーコード 「売れる文章」を見きわめる驚異のアルゴリズム
- 作者: ジョディ・アーチャー,マシュー・ジョッカーズ,西内啓,川添節子
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2017/03/23
- メディア: 単行本
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ニューヨークタイムズのベストセラーリストをもとに、ヒットした小説とそうでなかった小説にどんな差があったのか。テキストデータをもとにデータ分析を行い、その違いを探っていった結果をまとめています。どんなトピックが選ばれたのか、文体にはどんな特徴があるか、どういう動詞がよく使われているか…これらをもとに、現代のアメリカでベストセラー小説を書く上でポイントとなる要素を分析していきます。この分析が示しているのは、あくまでも「ベストセラーになっている小説にはこういう傾向がある」という結果までであって、「こう書けばベストセラーになる」というハウツーではありません。しかし、結果として過去に出版された物語講座・小説講座などでしばしば強調されてきたようなトピックが挙がり、そのこと自体に意味を見出す読みもあるでしょう。
しかし、読み違えてはならないのはこれはあくまでもテキストデータの分析である、ということ。あくまでもこの調査が行われたアメリカの、一時点での傾向をもとにしたものであって、やっぱり時代、国や地域、言葉、いろんな要素が絡んでくる。繰り返しになりますが、重要なのはそういった「テキストデータによるデータ分析がここまで来ている」というところで、追記で説明されている部分が、一番面白い部分なのではないでしょうか。
とはいえ、その手法については、統計学をはじめとした専門知識が必要な部分で、いい意味でざっくりとした説明、専門家でなくてもイメージがつく範囲での説明にとどまっています。細かな手法までを学ぶ必要はなくて、大ざっぱに「こういうことをやっているんだ」というところをつかむには適度な範囲だと思いますが、もう少し細かいところもがんばって読みたかったなぁという気持ちもなくはない、というのが正直な感想です。
「統計学が最強の学問である」でおなじみの西内啓さんが解説で日本国内でやりたいと思う人がいれば……と書かれていましたが、日経BPさんは本書を出されてる縁もあるし、そのうちやりそうな気がします。まずはビジネス書でやるのがいいと思うな。
夢がビジネスになる世界で/もう一つのプロ野球 石原豊一
ドラフトの日になると「今日は電話がかかってくるかもしれないから……」なんて言う人が、いませんか。
もちろん言った本人は冗談のつもりで、周囲もそれをわかっている。それぞれの距離感で野球に接し、今はナイターの結果に一喜一憂したり、草野球を楽しんだりしている。そんな「大人」になれなかった人たち。大人にさせなかった人たちによる「もう一つのプロ野球」を追います。
マニー・ラミレスの加入で話題を集めた四国アイランドリーグをはじめ、日本にもNPB以外の独立リーグがあります。アイランドリーグからは昨年首位打者を獲得したロッテ・角中をはじめとして、様々な選手がNPBに進んでいます。また、現在DeNAの監督を務めるラミレスはNPB引退後はBCリーグで選手とコーチとして活動していました。
一方で、いつの間にか経営に失敗して消えてしまったのが関西独立リーグ(現:BASEBALL FIRST LEAGUE)。そのゴタゴタを追うところから本書は始まります。
リーグの実態、無給だけれども掲げられたままの「プロ」の看板。これは現代社会において、レールから外れてしまった若者たちが、「夢」を追いかけ続けることにすがるための拠り所になっているのでは、と著者は思い至ります。それはまさに本書の中でも触れられている藤田結子の「文化移民」ともオーバーラップするもので、同じようにこれをビジネスにしている人たちもいる。彼らの「プロ野球」への夢は、グローバル化した社会のなかで、海外にもつながり、皮肉にもグローバル化したがゆえに「夢から覚めさせない」ビジネスにつながっているのです。もはや自己啓発と化し、「自分探し」の延長になった野球ビジネスは、「タックス・プレーヤー」とよばれる、いわば「プロ野球体験」ができる「商品」まで生み出してしまう……。
どこで本人が夢に折り合いをつけるのか。ビジネス側からすれば、自分たちが覚めたく無いという限りは、共犯関係だと言うかもしれない。
一方で、今から7年前の2010年、若者に夢をあきらめさせろ!と書いた社会学者がいました。ピースボートに乗り込んで、世界平和や夢を持ち出し、その「夢をあきらめさせない」仕組みを看破し、「承認の共同体」の限界を探った本です。先述の藤田結子による文化移民の本といい、もうこの10年ぐらい「夢をどう諦めさせるのか」という話は、あらゆるところで出てきているのかもしれません。そのうち地下アイドルの分析もされるのではないでしょうか(もしくは僕が知らないだけでもうあるのかも)。
その背景にあるのは、いい学校を出て、いい会社に定年まで勤めて…という神話のウソに気づいたあと、次の物語が語られることのない時代に、それぞれの生き方を見つける術を伝えられない。そんな現代の迷走があるのかもしれません。
しかし、それぞれの生き方である以上、それは誰かに与えられるものではない。僕も含めて、ぼんやりとした不確かさと上手く折り合いをつけながら生きていくしかないのでしょう。あるいは、東浩紀の言う、「観光客」が一般性を持つのかもしれません。
登場するノマド・リーガーたちの危うさを描きながらも、最終章に描かれたあるプロ野球球団職員のエピソードは、彼らをビジネスとして利用しようとするものに利用されるだけではなく、共犯関係に持ち込むぐらいにやりきってほしいという、著者からのエールのようにも読めるのです。
ベースボール労働移民 ---メジャーリーグから「野球不毛の地」まで (河出ブックス)
- 作者: 石原豊一
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2013/02/21
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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希望難民ご一行様 ピースボートと「承認の共同体」幻想 (光文社新書)
- 作者: 古市憲寿,本田由紀
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2010/08/17
- メディア: 新書
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小倉のキックパスは準備していたプレーだったか(17.05.20 SR ROUND13 シャークス戦)
サンウルブズ、今年もシンガポールでの勝利は叶わず、既報の通り13節は17-38で敗れました。
堀江、立川、大野が復帰し、5連戦目のシャークスに対してBYEウィーク(休み)明けで必勝を期して臨んだと思うのですが、苦しい結果になりました。
結果として最終盤の3連続トライを奪われるきっかけになってしまったのが、表題の小倉のキックパスでした。
負傷者が相次ぐ中、おそらくキックが難しい状態となった田村に代わって出場した小倉。いきなりPGを決めて4点差。その後のキックオフ(福岡を狙われたプレーは何か対策考えないといけないですね…)からシャークスの猛攻10分間をなんとか耐えて(立川のインターセプトはすごかった!!)笹倉のタックルから相手のノッコンを誘い、マイボールスクラムに。自陣ゴールラインまで7mぐらいの位置。残り7分。4点差。
スクラムから出たボールをどうするのか。キックで進めてもまた相手ボールでのラインアウトだし、ノッコンも多くて、コンディション考えてもこの位置からトライまで持っていける自信もなかったと思います…。
で、解説の栗原さんもどうやって進むか…みたいな話をしている中でのキックパス!完全にシャークスの意表を突くプレーではあったのですが、痛恨のノッコン…。そこからの攻防は振り返るのもつらい展開になってしまいました。
どうしてもフォワード中心のカメラワークになっているので、何とも言いきれないのですが、スクラム前のJ-Sportsの映像を見る限りだと、バックス陣は何か会話はしている様子でした。これまでの日本のやってきたラグビーを思うと、選択肢として一か八かに見えてしまうかもしれないし、結果失敗してしまったのですが、江見は完全にフリーだったし、しっかり下がった位置から小倉のほうを見ながら走り出しているので、オプションとして用意していたプレーだったのではと、見ています。
キャッチできなかった江見個人が責められるべきではないと思いますが、用意していたプレーだったとしたら、それが結果うまくいかなかった。そこからズルズルと3本取られてしまった。そこは大いに修正すべきだと思います。ただ、あそこまで正確にコントロールできるんだったら、これからももっと武器にしていいプレーだったとは思うのです。
あれを前半20分とかでやってれば何やってんねん、リスキーすぎるやろと思います。キックパスというプレー自体が不確実な要素を多分に含むものであることは間違いない。ただ、いみじくも解説がありましたが、蹴った小倉の、そして栗原さんの所属チームであるNTTコムでは「フットパス」として、より正確なキックパスを練習しているという。最後の10分で何か一本取るためのビックプレーが必要、となったときに、戦略的な交代で投入できるインパクトプレーヤーもいない、エディのときのように自陣ゴール前からつないでつないでいくような「過酷な訓練」もできてない、となれば、必要な選択肢の1つだろうと思うのです。
ハリケーンズがキックパスをうまく使ってトライを取った試合もありました。ハリケーンズじゃないんだから、という考え方もあるだろうし、ハリケーンズの先のオールブラックスと戦うんだから、という考え方もある。ティア1と戦っていく中で新しいオプション、戦術ももちろん必要です。ループプレーのように、キックパスは「ジャパンらしさ」として取り入れていくのか、そうじゃないのかはこれからの試合で見ていきたいポイントの1つになったのですが、少なくともシャークス戦のキックパス自体は用意があって、しっかりできたプレーだったんじゃないかと言い聞かせて、次への希望・楽しみを何か見つけるとしたら、これかな、と思っています。
けが人続出。次節、そして6月がどうなるのか。不安なような、楽しみなような……。
ラグビーワールドカップ2019の周知度・関心度
組み合わせが決まり、いよいよ本格的なスタートを切ったラグビーワールドカップ2019.本番まで逆算で考えていかなくてはならないのは、選手・チームだけではなく、運営もまた同様です。全国各地、オリンピックよりは参加する国の数こそ少ないかもしれませんが、およそ2か月間、多くの方が日本にやってくる。
日本に住む人も含めて、ワールドカップを楽しむことはできるのか。会場は埋まるのか、本当に大丈夫なのか。そんなことが問われ続けたまま、月日が経ってきました。
ちょっと前の調査ですが、2017年1月31日に東京と生活文化局が発表した「ラグビーワールドカップ2019™の周知度・関心度」という調査があります(以下「™」マーク略)
別紙7 ラグビーワールドカップ2019TMの周知度・関心度|東京都
回答数はそれぞれ1,820あります。で、質問は3つなんですが…。
質問1)日本のどこの自治体で開催されるかを知っているか
→A.ラグビーワールドカップが開催されることを知らない44.8%
う…。
質問3)ラグビーワールドカップをどのようにして観戦したいか
→A.家でテレビ観戦したい 63.2%
観戦したいと思わない 23.1%
チケットを購入してスタジアムで観戦したい 13.6%
やめて!もう事務局のライフは0よ!と言いたくなる結果が並んでおります…。
ちなみに調査機関は2016年9月16日~10月2日。2015年大会の大フィーバーから1年経って、の結果。うすうす感じていた現実がドーンと突き付けられたような内容ですね…。
とはいえ、それが現実。そこからやっていくしかない、というのが実情です。あと2年。繰り返しになりますが、選手だけではなく、運営も1日も無駄にできない日が続きます。火中の栗を拾いたいあなたには電通で契約社員がずっと募集されてるよ!
挑発する写真史/金村修、タカザワケンジ
写真史を語ることは、地図を作り、その人がどの位置に立っているかを確認することだ。しかし自分の立ち位置は常に揺れる。誤解もある。いつも何かのバイアスがかかっている。写真は進歩するのではなく、反復し続けるのかもしれない。
そんな前書きから始まって、年代別ではなく、テーマ別で軸となる3人の写真家を設定し、そこからその周囲も含めて色々語り合う、2012年の青山ブックセンターでの写真史講座をもとにした本。寡聞にして、金村修さんも、タカザワケンジさんも存じ上げず、ではありましたが、縦横無尽にいろんな写真家・作品の話が飛び交い、僕レベルの知識だとこんな人がいるんだ、という発見に満ちた1冊。
以下、メモ。
「決定的瞬間」は誤訳。”Images a la Sauvette" 逃げ去るイメージ、かすめ取られたイマージュ。決定的瞬間は無くて、フレーム、構図がある
牛腸茂雄 「日々」「見慣れた街の中で」
春日昌昭「オリンピックのころの東京」
ミラーズ・アンド・ウインドウズ 行き来するけど。あとどっちもフレームがある。無理やり定義した。一つの見方
鏡派…スティーグリッツ、自己表現のための写真、「テイク」ではなく、メイクの重視
窓派…アジェ、記録としての写真
中平卓馬「記録という幻影 ドキュメントからモニュメントへ」写真に写ったものを信じる警察と、写真は簡単に嘘をつく、と語る中平。写真という言葉の成り立ち、リアリズム写真 「沖縄を見たのではなく、沖縄の意味を見たに過ぎない」写真の意味ではなく、写真を見れるか
写真は前後がわからない 壊されていく途中なのか、つくられていく途中なのか
作家の写真にはルールがある、バイアスがある 「もの」派・コンセプチュアルアートを撮ることで意味を奪う写真 「もの」と「もの」との関係を見せているものから、フレーミングで関係を変える面白さ
ベッヒャーの不気味さはどこから来るか 近代概念の類型・統計…人間を数値化、データ化するのが近代的意識の本質
深瀬昌久 豚を殺せ!