休日にライターのようにラグビーの取材をすることもある(けど最近お休み気味)

平日は私企業で営業マン、休日は時々ラグビーイベントとかの取材をしている30代男性のブログです。でも最近は本とか映画とかの話が多いです。

それはあまりに人間的な。/ダン・カーター自伝

3週間あまり更新ができておりませんでした。本業が忙しかった、は言い訳ですね。サンウルブスの1stシーズンが終わり、いろんな話も出てきて、トップリーグ開幕も近く…ということで、何を書こうか、何が書けるのか手が止まっていたのが本当のところかもしれません。

そんな中ではありますが、2週間ほど前に発売になったこの本を読み終えたので、ご紹介。タイトルもそのまま、「ダン・カーター自伝」です。

 

 

ダン・カーター 自伝 ―オールブラックス伝説の10番―

ダン・カーター 自伝 ―オールブラックス伝説の10番―

 

 

 http://www.amazon.co.jp/dp/4491032351

 

ダン・カーターこと、ダニエル・カーター自身の説明はラグビーを熱心に見ている人には不要と言えるかと思いますが、この10年ほど、オールブラックスの10番と言えば彼。史上初のワールドカップ連覇をはじめとする近年の圧倒的なまでの強さを作り上げたメンバーの一人。代表として最後の試合になった2015年のワールドカップ決勝、後半25分を過ぎて4点差に迫り、追い上げムード高まるワラビーズを一瞬で黙らせたドロップゴールは今も鮮明に思い出せます。

オールブラックスで獲得したキャップ数は115、年間最優秀選手に選ばれること3回、テストマッチ通算得点歴代1位。ワールドカップ後はフランス・ラシン92に移籍してチームをヨーロッパチャンピオンシップの決勝に導き、直近に来日した際も各地で歓迎を受けました。某福岡の高校にもやってきたものの、主力メンバーはセブンズの大会で東京遠征中。会えなかったメンバーは大いに嘆いたと聞いてますが(笑)、誰もが認めるスーパースターであり、世界最高の選手の一人でしょう。

 

そんなダン・カーターの自伝、ということで、どんな内容なんだろうと楽しみにしていましたが、そこに書かれていたのは想像以上に人間らしい、彼の来歴でした。

その前に出版されてリッチー・マコウの自伝では、若き日のリッチーが、ラグビー選手であった叔父から「GAB=Great All Black」と書けと言われてその道を意識し、歩き始めたというエピソードがあります(ニュージーランドで公開されるという映画の予告編にもそのシーンがありました)。カッコいいですよね。言葉はおかしいですが、絵になるエピソードというか。

それに比べて若き日のダン。詳しくは読んでみてほしいのですが、お酒で失敗したり、なんとなくプロにもなりきれなかったり、プロになってからも広告契約をはじめ色々あったり…。極めつけはプロポーズのエピソードでしょうか。ちょうどラグビー選手がアマチュアからプロフェッショナルになる過渡期ということを差し引いても、ときに微笑ましく、ときにいい意味で呆れてしまうような、あまりに人間的な、等身大のエピソードが繰り広げられます。また、クライストチャーチ地震、そして怪我との戦い…特に2011年の際の描写には、読んでいる側も辛くなるような、生身の痛さも感じられました。

 

もちろんこうした自伝はライターさんがいて、その人がどういう見せ方をしたいか、どういう切り口をしたいか、意図があると思います。もちろんそれはまとめられる本人の「語り」の内容も大きくて、その意味では本人の「魅せたい自分像」もあるでしょう。悪い意味ではなく、それも含めてその人の自伝なのだと思うのです(何周回ってのメタの話なんだよというツッコミはさておき)。また、彼の人生はまだまだ続きます。今後どういうタイミングで読まれたとしても、残るものとして作る難しさもあるでしょう。

それらも踏まえて、こういう見え方をすることを意図した、という点でも大変興味深い内容だったと思います。

 

先日ご紹介したリッチー・マコウのものとも合わせてよんでみるのも面白いはず。ボリュームもあって読み応えもばっちり。

ぜひじっくり読んでみてください。